
2014年月刊zero23☆12月号掲載「浅倉かおりのオシゴト日記より

2014年は、お世話になった方が亡くなった。
どちらも40代という若さで、どちらも急病で、突然の訃報だった。
ひとりは男性で私の家を建ててくれた人。
出会ったのは今からちょうど9年前、私が39歳のときだ。当時、住まいと仕事部屋を別に借りていて、「このまま家賃を払うならマンションを買ったら?」という友人のアドバイスもあって物件を探し始めたのだけどなんだかしてしっくりこなくて、どの道ローン地獄に落ちるなら(笑)、自分仕様の家を作ろうと思ったのだった。
100%オリジナルの家だから、設計は工務店さんに依頼したい。「いくらか値段は高めらしいけど、センスのいい設計士さんと腕のいい職人さんでやっているらしいよ」。そんなビビるうわさも小耳にはさみつつ、思い切って電話したのが始まりだった。
出てくださったのは、建築家でもある専務さん。「あのですね。お金はそんなにないんです。サイズも一人暮らし用だからちっちゃくていいんです」とあんまり儲けのでない客であることを最初に説明し、「唯一の希望は、漆喰の壁と天然の無垢材、できれば県産材を使いたいです」と伝えた。
すると
「私も出来ればクロス張りの壁や集成材を使わない家づくりを目指していますので、大丈夫ですよ」と、おだやかな声でお返事してくださった。決めた!この会社にお願いしよう。というか、半分断られるのを覚悟していたから、「わーい。本当にいいんですかっ?」そんな心境だった。
まったくゼロからの家づくり。昼間は仕事だから打ち合せは夜になる。深夜12時近くになるときもあった。私が欲しいデザインのシステムキッチンが山形になく、わざわざ仙台のショールームまで連れて行ってもらったり、ドアに入れるチェッカーガラスを探し出してもらったり。地産地消おたくの私にとって、ちょうど山形市内産の建材が使えたのも嬉しかった。
現場では1人か2人の大工さんが黙々と作っていく。工期中徐々にかたちになっていく過程や職人技を楽しめるのも、手作りを主とする工務店さんならではだ。
作り付けの部分は私の身長(148cm)に合わせて低めに設計され、客人を招いて改めて分かったのだけど、びっくりするくらい私にとって快適な空間になっている。
専務さんは私の意向、私の暮らし方、私の感覚をきっちり受け止めて設計してくれたんだと、あらためて思う。まさにプロの才覚!
実際、価格が高めだったかというと、新築のマンションを買うより安かった。その後、鎌田工務店さんは嶋地区にモデルハウスも建て、ますますバリエーションも広がって、予算に合わせた家づくりに対応しておられるようだ。来年で丸10年になるけど、今でも外から帰ると木の香りがほのかに漂い、天然素材は風合いが増し、劣化が遅いことも実感できる。
専務さん、今は天国の現場で、神様たちのお家をつくっているのかな。
本当に本当にありがとうございました。
どちらも40代という若さで、どちらも急病で、突然の訃報だった。
ひとりは男性で私の家を建ててくれた人。
出会ったのは今からちょうど9年前、私が39歳のときだ。当時、住まいと仕事部屋を別に借りていて、「このまま家賃を払うならマンションを買ったら?」という友人のアドバイスもあって物件を探し始めたのだけどなんだかしてしっくりこなくて、どの道ローン地獄に落ちるなら(笑)、自分仕様の家を作ろうと思ったのだった。
100%オリジナルの家だから、設計は工務店さんに依頼したい。「いくらか値段は高めらしいけど、センスのいい設計士さんと腕のいい職人さんでやっているらしいよ」。そんなビビるうわさも小耳にはさみつつ、思い切って電話したのが始まりだった。
出てくださったのは、建築家でもある専務さん。「あのですね。お金はそんなにないんです。サイズも一人暮らし用だからちっちゃくていいんです」とあんまり儲けのでない客であることを最初に説明し、「唯一の希望は、漆喰の壁と天然の無垢材、できれば県産材を使いたいです」と伝えた。
すると
「私も出来ればクロス張りの壁や集成材を使わない家づくりを目指していますので、大丈夫ですよ」と、おだやかな声でお返事してくださった。決めた!この会社にお願いしよう。というか、半分断られるのを覚悟していたから、「わーい。本当にいいんですかっ?」そんな心境だった。
まったくゼロからの家づくり。昼間は仕事だから打ち合せは夜になる。深夜12時近くになるときもあった。私が欲しいデザインのシステムキッチンが山形になく、わざわざ仙台のショールームまで連れて行ってもらったり、ドアに入れるチェッカーガラスを探し出してもらったり。地産地消おたくの私にとって、ちょうど山形市内産の建材が使えたのも嬉しかった。
現場では1人か2人の大工さんが黙々と作っていく。工期中徐々にかたちになっていく過程や職人技を楽しめるのも、手作りを主とする工務店さんならではだ。
作り付けの部分は私の身長(148cm)に合わせて低めに設計され、客人を招いて改めて分かったのだけど、びっくりするくらい私にとって快適な空間になっている。
専務さんは私の意向、私の暮らし方、私の感覚をきっちり受け止めて設計してくれたんだと、あらためて思う。まさにプロの才覚!
実際、価格が高めだったかというと、新築のマンションを買うより安かった。その後、鎌田工務店さんは嶋地区にモデルハウスも建て、ますますバリエーションも広がって、予算に合わせた家づくりに対応しておられるようだ。来年で丸10年になるけど、今でも外から帰ると木の香りがほのかに漂い、天然素材は風合いが増し、劣化が遅いことも実感できる。
専務さん、今は天国の現場で、神様たちのお家をつくっているのかな。
本当に本当にありがとうございました。